ピクトグラムとユニバーサルデザイン:言語に依存しないマニュアル設計

多国籍化が進む製造現場では、言語の壁を越えた「伝わる」マニュアル設計が重要です。安全性・生産性・品質の確保には、誰もが直感的に理解できる情報設計が欠かせません。本記事では、ピクトグラムとユニバーサルデザインを活用したマニュアル作成の実践的手法を解説します。

ピクトグラムとユニバーサルデザインの基本

ピクトグラムとは

ピクトグラムとは、視覚的に意味を伝える図形記号です。言語を使わず、誰にでも瞬時に意味が伝わるという特性から、安全標識や公共交通機関などでも広く使われています。

ユニバーサルデザインとは

「すべての人にとって使いやすい設計」を目指すのがユニバーサルデザインです。製造現場では、多国籍スタッフや高齢作業者、視覚に頼りにくい環境での作業者も対象となります。


製造マニュアルに求められる設計原則

  • 視認性の確保:文字情報だけでなく、図や記号で一目で要点が分かる構成
  • 誤解の防止:抽象的な表現よりも具体的なアイコン・図解を使用
  • 反復可能性:手順が誰にでも再現できるよう、標準化された形式で提示


作業標準書でのピクトグラム活用事例

ピクトグラムは、以下のような作業標準書に有効です:

  • 安全手順(例:保護具着用、感電注意)
  • 工具使用の指示(例:トルクレンチ、六角レンチ)
  • 作業姿勢の注意(例:しゃがむ、持ち上げ禁止)

図解と写真の効果的な組み合わせ

写真だけでは伝わらない「意図」や「注意点」を補うために、ピクトグラムや矢印・色を組み合わせることで視線誘導が可能です。

  • 矢印:動きや方向の示唆
  • 色:注意(赤)、推奨(緑)、情報(青)
  • 枠・囲み:工程の区切りや重要情報の強調


属人化防止と定着化を促す仕組み

ピクトグラムを使ったマニュアルは、以下の属人化リスクを低減します:

  • 熟練作業者頼みの手順伝達
  • 口頭指示によるバラつき
  • 外国人作業者との認識違い

さらに、現場掲示やOJT教材としての展開も容易で、定着率を高める効果があります。


図解ソフトとツールの選定ポイント

製造業で多用されている図解ソフトの例:

ツール名 特徴
PowerPoint 汎用性高、社内標準にしやすい
draw.io 無料、フローチャートに強い
Visio 複雑な構成図・工程図向け
Canva ビジュアル要素の作り込みに最適

【ポイント】

  • テンプレート機能やアイコンライブラリの有無
  • PDF出力・共有のしやすさ
  • 他部署との連携(例:設計部門との連携)

まとめと実践アクションステップ

要点整理:

  • ピクトグラムとユニバーサルデザインは、多様な作業者に共通理解を促す鍵
  • 図解や色、視線誘導を組み合わせることで、情報の伝達精度が向上
  • 属人化の排除・標準化にも貢献

明日からできるステップ:

  1. 現在のマニュアルを見直し、文字情報のみに頼っていないか確認
  2. 「伝わらない」工程を洗い出し、ピクトグラムの挿入を検討
  3. 社内で使える図解テンプレートやアイコンセットを整備
  4. 定着化のため、現場でのピクトグラム教育機会をつくる

よくある質問(FAQ)

Q1: 製造マニュアルにピクトグラムを使うと何が変わりますか?

A1: 言語の壁を越えて情報が伝わるため、作業ミスや教育時間が減少します。

Q2: ピクトグラムはどこから入手できますか?

A2: 無料の素材サイトや、ISO標準の記号セット、社内テンプレートを活用可能です。

Q3: 写真とピクトグラム、どちらを優先すべきですか?

A3: 写真で実物を示し、ピクトグラムで意味を補う「併用」が最も効果的です。

Q4: ピクトグラムが多すぎると逆に混乱しませんか?

A4: 意味が似たものをグループ化したり、色や配置で整理すれば混乱は防げます。

Q5: ツールは何を使えばよいですか?

A5: PowerPointやdraw.ioなど、社内運用しやすいツールが推奨されます。

この記事を書いた人

編集部

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