読みにくい日本語 ~あいまいな表現の実例~

皆さんは、マニュアルを作成する際、正しい日本語を使っていますか?

実際に世の中で使われているマニュアルの中にも、表現を簡略化するあまり、日本語として誤りとなってしまっていたり、正確な内容が読み取れなくなっていたりする例がよく見受けられます。

慣れている方だと問題なく読めてしまう内容でも、初めて読む人にとっては誤解の原因となる可能性があるため、日本語の正確性はマニュアルの作成においても重要です。

今回は、実際のマニュアルに登場する、ちょっと不思議な日本語の例をご紹介します。
ぜひ、新人の気持ちになって、この通りに作業できそうか考えてみてください。

「圧力が基準値より60%未満の場合」

実際のマニュアルより、検査で異常が見つかった場合の対応内容を記載している箇所から抜き出しました。

一見すると問題ないように見えるかもしれませんが、「未満」は「~より低い」と言い換えることができるため、ここでは「~より」と「未満」がどちらも使われていることにより、意味が被ってしまっています。

元は「圧力が基準値より低い場合」という文を作成しており、後から「60%未満」の情報を足したことにより、日本語として意味が通らない文になってしまっているようです。

また、この文だと「~より60%低い(=40%)」の意味である可能性も否定できないため、読み手の混乱を招いてしまいます。

「~より」や「未満」を使用する場合は、どちらか一方のみを使用するようにしましょう。

修正例:

  • 圧力が基準値の60%未満の場合

※~60%、の意味

  • 圧力が基準値の60%より低い場合

※~60%、の意味

  • 圧力が基準値より60%低い場合

※40%、の意味

 

「油面計の下限以上にあるか確認してください」

こちらも検査の手順から抜き出した1文です。

問題ないように見えますが、実際には「油面計」自体に「下限」が存在するわけではありません。

「油面計」は油量の下限を調べることができる器具なので、「下限」は、この文では明示されていない「油量」にかかっていると考えられます。

ここでは内容を補い、「油量が、下限以上にあるか」を「油面計で」確認、のようにすると正しい日本語となります。

修正例:

油量が下限を下回っていないか、油面計で確認してください

 

「バッテリー容量計本数が0本を下回った場合」

この文には複数の問題が含まれています。

「バッテリー容量計本数」とは何でしょうか。「バッテリー容量計」自体を「1本、2本……」のように数えることはできません。

ここでは、バッテリーの残量を示すメーターの、棒状のメモリの表示本数を示すと考えられますが、「バッテリー容量計」の機種によっては、表示は棒の形ではない可能性も考えられます。

文脈的に、使用するバッテリー容量計の機種に指定がある、等であれば問題ないですが、そうではない場合は「0本」の記載が誤り、ということになってしまいます。

 

また、バッテリー容量が「0を下回る」ことはあり得るのでしょうか。

バッテリーの量を示していると考えられるため、マイナスになることはないと考えられます。

ここではシンプルに「0本になる」「0になる」としておけば問題ないでしょう。

修正例:

  • バッテリー容量計の表示が0本になった場合
  • バッテリー容量が0になった場合

 

「処理完了したらテスト状態を5~10秒で終了する」

こちらは、「5~10秒で終了する」の意味が不明確な例です。

この表現だと、「終了する」動作にかかる時間を示している場合と、「終了する」動作のタイミングを示している場合、どちらとも読み取ることができます。

時間にかかわる表現は不明確になりやすく、誤操作に繋がる可能性があるため、特に注意する必要があります。

修正例:

  • 処理完了したら、テスト状態が5~10秒かけて終了する
  • 処理完了したら、テスト状態が5~10秒後に終了する

 

まとめ

今回の記事では、実際のマニュアルでよく目にするような例をご紹介しました。

皆さんのお手元のマニュアルにも、同じような表現を使っている文はありませんか?

あいまいな表現を避けるため、「第三者にわかる数値を使って書きましょう」というのはよく耳にするかと思いますが、今回ご紹介した例では、数値が含まれているにもかかわらず誤解を招いてしまっています。

数値を使っているからといって安心せず、日本語として正確に意味が伝わる文になっているか、今一度見返してみてください。

 

今回ご紹介したような、誤っている文や誤解を招く表現を見つけるためには、必ず作成後に見直す必要があります。

誤脱字等の表面的な内容は機械的なチェックで発見することもできますが、ご紹介したような誤りや不明確な表現については、やはり人の目で確認する必要があるのが現状です。

また、作成した文の間違いには、自分では気が付きにくいこともあるため、作成したマニュアルは、他の方にチェックを依頼することをおすすめします。

もし不安がある場合は、文章校正専門のチェッカーにチェックを依頼するか、作成自体を専門の制作会社に依頼することをおすすめします。

この記事を書いた人

編集部 Y

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