
ドイツ語は、ドイツ・オーストリアをはじめ、ヨーロッパで広く使用されている主要言語の一つです。また産業翻訳分野、特に製品マニュアルにおいても非常に翻訳ニーズが高い言語です。マニュアルの翻訳では常に正確さと専門性が求められますが、ドイツ語も例外ではありません。
マニュアルをドイツ語に翻訳する際には、特有のルールや注意点を押さえることが重要です。特殊な文字や文法、大文字のルールなど、細部にわたる注意が求められます。本記事では、マニュアルのドイツ語翻訳で特に気を付けたいポイントを詳しく解説します。
特殊な文字に注意
ドイツ語には、ä, ö, ü といったウムラウト(¨)が付いた母音や、ß(エスツェット)という特殊な文字が存在します。これらの文字は英語や日本語にはないため、文字化けが起きていないか、翻訳後のテキストを確認する必要があります。
特に、電子データでマニュアルを使用する場合、エンコードが適切でないとこれらの文字が正しく表示されません。UTF-8やISO 8859-1(Latin-1)など、ドイツ語に対応したエンコード形式を使用しているか確認しましょう。
マニュアルを出力紙で使用する場合でも必ず、出力後に文字が正しく表示されているか確認するようにしましょう。
単語の大文字表記
ドイツ語では、名詞がすべて大文字で始まるというルールがあります。これはドイツ語文法に特有の特徴であり、このルールを守らないと、ドイツ語話者には不自然に感じられることがあります。
例:
正しい: “Das Haus ist groß.”
誤り: “Das haus ist groß.”
(英語: “The house is big.”)
特にドイツ語がわからない方が最終チェックを行う場合、文の途中に大文字が出現すると、英語等の感覚で誤りと判断し、小文字に修正してしまいがちです。ドイツ語の場合は安易に修正してしまわないよう、十分注意しましょう。
数字や日付の表記
ドイツでは、数字や日付の表記が日本や英語と異なる場合があります。適切な形式で翻訳することは、正確さと信頼性を確保するために欠かせません。
3.1. 小数点と桁区切り
ドイツ語では小数点にコンマ(,)、桁区切りにピリオド(.)を使用します。マニュアルで記載を間違えると数値が大きく変わってしまい、大きな事故に繋がりかねないため、特に注意が必要です。
例: 1,000.50(英語) → 1.000,50(ドイツ語)
3.2. 日付形式
ドイツでは日付を「日.月.年」の順で記載します。順番を誤ると誤訳になるため、注意が必要です。
例: 2023/08/10(日本語) → 10.08.2023(ドイツ語)
また、時刻表記も24時間制が一般的であるため、12時間制をそのまま使用すると誤解を招く可能性があります。翻訳時には、文脈に応じた表記方法を選択しましょう。
まとめ
ドイツ語翻訳では、特有の文法や文字の使用に加えて、文化的な背景や業界標準にも精通することが求められます。特にマニュアルのような技術文書では、正確さが最優先されるため、数字やフォーマット、語順などの細部にも細心の注意を払う必要があります。
翻訳作業では、ドイツ語の自然な表現を心がけるとともに、使用目的に適したフォーマットや文体を維持することが重要です。これにより、読者がマニュアルをスムーズに理解し、正確に操作や作業を進められる高品質な翻訳を実現できます。
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編集部 Y