
翻訳メモリの基本的な機能は、翻訳作業時に、翻訳対象の原文と同じ、または似ている文が翻訳メモリに登録されていないか機械的に確認し、登録されていた場合は対応する過去の訳文を表示させて翻訳作業者が参照できるようにする、というものです。
その他に、より細かい単位で翻訳メモリに登録されている内容を検索し、活用できる機能もあります。この機能を「訳語検索」といいます。
今回は、訳語検索の使い方とその注意点をご紹介します。
訳語検索とは
1.1. 機能の概要
訳語検索とは、翻訳作業時の画面上で、単語~文節単位で、翻訳メモリに登録されている内容の検索ができる、という機能です。
通常、翻訳メモリを使用して翻訳作業を行うと、文単位での一致を判断して候補訳が表示されますが、「訳語検索」を使用すると、1単語から検索を行うことができます。原文・訳文のどちらの内容からでも検索することが可能で、翻訳メモリのマッチ率が低い文の翻訳を行う際や、翻訳チェックを行う際に有効に使用することができます。
翻訳メモリを参照している画面
訳語検索を使用している画面(原文で「サンプル」を検索)
訳語検索を使用している画面(訳文で「Sample」を検索)
1.2. 訳語検索の使い方
訳語検索の使い方は簡単です。翻訳作業中の原文または訳文のうち、検索したい語句をカーソルで選択し、作業画面上部の「訳語検索」をクリックします。
カーソルで原文が選択されている場合は原文、訳文が選択されている場合は訳文が翻訳メモリ内で検索され、検索語句が含まれる文の一覧が表示されます。
訳語検索を行う際の注意点
訳語検索は、翻訳メモリを細かい単位で活用する機能です。ご紹介したように便利に使用できる反面、注意点もあります。例として、以下は原文「時間」で訳語検索を行った状態です。
ここでは、この例を使用し、訳語検索を行う際の主な注意点を2点ご紹介します。
2.1. 検索語句によってはヒット数が大量になる
訳語検索を行うと、翻訳メモリに登録されている文のうち、検索した語句が含まれるものが一覧で表示されます。今回の例でも、原文に「時間」が含まれる文が、対応する訳の内容に関わらずすべて表示されています。
訳語検索では一致率が考慮されないため、すべての検索結果が表示されることになり、場合によっては訳し分けが必要なもののうち片方ばかりが先に表示されることもあります。
検索を行って最初に表示される訳をそのまま採用するのではなく、必ず画面をスクロールし、ヒットした他の項目も確認することをお勧めします。
2.2. 検索語句に対応する訳を単語単位で示すことはできない
訳語検索時に表示される内容はあくまでも文単位です。そのため、原文中の1単語が検索でヒットした場合でも、その単語に対応する訳文の箇所を示してくれるわけではありません。例えば今回の「時間」を検索した例では、原文中の該当する箇所がハイライト表示されていますが、訳文の該当する箇所(「hour」「time」など)は示されておらず、作業者が見て、訳文の該当する箇所を判断する必要があります。
訳語検索はあくまでも翻訳作業のアシストとして、訳語選びの参考に使用するようにしてください。
まとめ
訳語検索は、翻訳メモリの内容を単語単位で活用できる機能です。翻訳作業時に、過去に使われている訳を単語単位で調べたいときや、翻訳チェック作業時に単語単位での訳の統一を確認したいときに、ぜひ活用してみてください。
これまでにご紹介したように、翻訳メモリは、機械的に一致する内容を判断したり、表示させたりする機能を持っていますが、文脈を考慮したり、訳し分けが必要な場合の処理は苦手です。このような文や語句を含む文章を翻訳する場合は、機械的な処理に頼るのではなく、必ず人の目でも翻訳内容を確認することをお勧めします。
★過去の「翻訳メモリ」シリーズ★
この記事を書いた人

編集部 Y